映画 無能の人 (1991)

  竹中直人監督主演の映画だけあってシュールなホームドラマとしても中々の出来になっている。主人公は三人家族で妻と子が居る。多摩川近くの公団住宅に住んでいる。妻は天才漫画家としての夫の才能に惹かれて結婚したが今は貧乏である。主人公にはいろいろ理由があって新しい作品を書くのが苦痛なのだ。で今は多摩川の河原で石を売る店を出している。

  案の定全然売れないのだが主人公は美石狂会の本部を訪ね会費を払ってオークションに参加する。山梨の釜無川で拾ってきた見事な石がオークションに出される。妻が買い手と競り合って値が4万まで行ったが妻が5万といったところで終了した。結局参加料と手数料の損である。妻にブチ切れられ息子にも泣かれた主人公は今度は多摩川の渡し舟で日銭を稼ごうと言い出すが元手が無く諦める。

  妻は車券売りのパートに出て、主人公も新しい漫画を描き上げるが出版社に掲載を断られる。今の読者には古くて暗いというのだ。絶望した主人公はホームレスになろうとするが浮浪者に場所を追い出される。結局主人公は石を売る商売に戻り妻も仕方なく受け入れるというのがこの結末である。三人が夕日の中をとぼとぼと家に帰って行くほのぼのとした情景で幕を閉じる。