東洋文庫 唐詩三百首 1(1973)

王維の五言古詩から紹介する。読み下し文を一部改変している。

〈送別〉

馬より下りて君に酒を飲ましむ

君に問う 何の之く所ぞと

君は言う 意を得ず

南山の陲に起臥せむと

但去れ 復問うこと莫けん

白雲 尽くる時無し

〈青谿〉

ここに黄花川に入るに

つねに青谿の水を逐う

山に随いてまさに万転せむとし

趣途 百里無し

声は喧し 乱石の中

色は静かなり 深松の裏

漾漾として菱荇を汎べ

澄澄として葭葦を映ず

我が心素より已に閒なり

清川 澹たること此の如し

請う 盤石の上に留まり

釣りを垂れて将に已まむとす

次に柳宗元の作を紹介する。

〈漁翁〉

漁翁 夜 西厳に傍うて宿す

暁に清湘を汲んで楚竹を然く

煙銷え 日出て 人を見ず

欸乃一声 山水緑なり

天際を迴看して 中流を下れば

巌上無心に雲相逐う

李白杜甫の方が有名だが、王維、柳宗元の詩の方が何だか心に響くものがある。