東洋文庫 秋山紀行 (1828)

  この書は十返舎一九と親交がある塩沢在住の鈴木牧之が59歳の時、信越国境にある秋山峡を訪れて村落の様子を詳しく記したものである。秋山峡は秘境中の秘境であり平家の落人伝説がある。案内役の桶屋團蔵と共に文政11年(1828年)9月8日塩沢を発ち見玉に至る。その後は中津川の渓谷沿いに集落をたどり11日には最奥部である湯本に至った。その後は反対側の渓谷を通って14日に帰還した。

  記事になっているのは、見玉、清水川原、三倉、中の平、大赤沢、小赤沢、上ノ原、和山、湯本、屋敷、前倉、上結束、坂巻の集落である。大赤沢と小赤沢の間に苗場山紀行が付されている。これは牧之が42歳の時に登山して著したものである。十返舎一九の急逝により秋山紀行は出版されなかったが自筆本と写本が保存されており昭和37年には出版されている。

  各集落の戸数、家屋のつくり、調度、茶器、言葉の訛りなどを牧之は克明に記しており、畑や道の状況、眺望も記されている。牧之はまた絵心があり集落の絵図を山水画風に描き残している。これがこの本の民俗学的価値を高めている。

  この本にはすぐは読めない漢字が出てくるので調べながら読み進んだ。

葎 むぐら
迚も とても
燒 焼
栖む 住む
俤 おもかげ