吉田秀和 名曲のたのしみ 2012年7月14日放送分

時報

(女性アナの声で) 名曲のたのしみ。41年にわたって解説を担当された音楽評論家の吉田秀和さんが去る5月22日お亡くなりになりました。この時間は今年4月に収録したラフマニノフその音楽と生涯の最終回をお送りします。

名曲のたのしみ吉田秀和。云々、滞在したんですけれどもそれを切り上げてアメリカに戻っていきます。そして8月11日が彼のヨーロッパでの最後のコンサートになりました。アメリカに戻ってからの彼は精力的な演奏活動を続けるとともに作曲の筆も休めることは無かったんですが、作品がどんどん生まれてくるっていう方では無かった。で1940年の夏には二台のピアノのための交響的舞曲作品45の作曲に従事してこれはその年のうちに完成されますが、これが彼の筆から生まれた最後の作品となりました。今日はそれを聴きましょう。さすがに彼もかつての体力や気力も失われつつあって自分でもそれを認めて「私にはもう情熱は失われてしまった。」認めるようにはなっています。それでも祖国の危機存亡の有様を目の当たりにして演奏会の収入は全てロシア赤軍への義援金とすることを申し出ていたりします。例のバジャーノフの伝記によりますとロシア革命の当時の詩人アレキサンダー・ブロークの詩が引用されていますがそれは確かにバジャーノフの心情にもぴったりのものだったように思われます。〜時が流れる戦は荒れる暴動が起こり村が燃えるでもお前はやっぱり僕の国〜ところで作品45交響的舞曲は最初はバレエの演出家ミハエル・フォーキンのために書かれたらしいんですが1940年の秋フォーキンは突然死んでしまいます。それで交響的舞曲は振付師を失ってしまったんでラフマニノフはまずオーケストラのためにこの舞曲を書くんですけれども後に二台ピアノのための連弾用に書き直しています。今日はまずオーケストラ版から聴きましょう。各楽章にはそれぞれ真昼、黄昏、真夜中という題をつけています。(いつもの楽曲アナリーゼ)じゃ北ドイツ放送交響楽団ジョン・エリオット・ガーディナーの指揮でもって全曲聴きましょう。〜音楽〜

今僕たち聴いたのは云々。これをラフマニノフ、二台ピアノの連弾用に編曲しなおしています。これは数あるラフマニノフの連弾曲の中でも最も優れたものの一つでピアニスト達からも愛されてステージにもよくこの形で演奏されることが多い。むしろこっちの方が多かったかもしれない。で、ラフマニノフ自身もホロビッツと連弾して遊んでいたという話が残っています。これからアルゲリッチとラビノビッチのカップルによる演奏でもってこれの第1楽章と第2楽章続けて聴くことに致しましょう。〜音楽〜

今日は云々。それじゃあ又。

名曲のたのしみ、生前収録していた吉田秀和さんのお話は今回で最後となりました。来週からは吉田さんが残した原稿を元にシベリウスその音楽と生涯を放送する予定です。

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