BS ドキュメンタリー べリングキャット 〜市民が切り開く調査報道〜(2018)

イギリスのレスター在住のエリオット・ヒギンズ(36)が自己の生い立ちについて語る。彼はべリングキャットの創設者である。パソコン好きで引きこもりだった彼はゲームにのめり込むとゲームサークルを主宰するという積極性も見られる人物だ。YouTubeとグーグルアースを駆使してロシアのフェイクニュースを暴いた事で一躍有名になった。

彼はISがアメリカ人のジェームス・フォーリーを処刑する映像からラッカ近辺の特定の場所を割り出しネットに公開する。その数ヶ月後べリングキャットを立ち上げた。

これはオープンソースの調査報道であり真実を暴くことにより権力を監視、牽制できるという。偽情報監視団体を主催するクレア・ウォードル女史は語る。べリングキャットは後ろ盾もオフィスも持たない、ボランティアで構成された組織で極めて詳細な分析を行い情報発信する。フィンランドのメンバー、ヴェリ・ペッカ・キヴィマキ氏は2014年7月17日のマレーシア航空17便墜落事故に注目し、ウクライナドネツク近郊で撮影された映像と軍事知識から使われた兵器を割り出し、ロシアの第53対空旅団から発射されたブークミサイルであると確定した。米国シャーロット在住のアリック・トーラー氏は豊富な動画とグーグルアースを分析しブークの移送トラックのミサイルの数を確かめている。また兵士と家族のSNSから旅団の移動場所がどこかを割り出している。

シリア在住のハディ・アルハティブ氏は米軍によるシリアの市場の空爆映像を分析する。まずこれがフェイク映像かどうか検討する。何故ならそういう映像がとても多いからである。バークレー法科大学院人権センターのアレクサ・コーニグ女史は語る。私たちはシリアなどで起きた事件の膨大な映像情報を保存するという彼らの活動を支援してきたという。入手経路を明確にする事により後に司法の場における戦争犯罪の証拠として活用できるという。ベルリン在住のメンバー、ティミ・アレン氏は専門知識を活かして空爆現場の3Dのモデルを作り上げた。

オランダのクリスティアン・トリーベルト氏はアンマンのホテル屋上からドローンを上げ市内の映像を撮影する。この映像の場所を特定できるかどうかネットで呼びかける。2016年のイラクでの爆弾テロの映像がある。この動画は拡散されロイターでもニュースとして配信された。だがこの動画には前の部分があり全部ヤラセである事が確定している。ニューヨーク大学のジェイ・ローゼン教授は語る。プロであろうとアマチュアであろうと実際に何が起きたのかを調べて世界中の人々に伝える行為は重要な仕事であるという。その情報が信頼できるかどうかはプロセスの透明性が担保されているかどうかにかかっている。ロシアの国営メディアはそういったフェイクニュースの親玉であり、べリングキャットにサイバー攻撃をかけているという。実力行使に出るという懸念もある。

2018年5月オランダなど5カ国合同調査チームによる記者会見が行われ、マレーシア航空17便墜落の原因はロシア第53対空旅団から発射されたブークミサイルであると発表した。

クリスティアン・トリーベルト氏はリビア武装勢力の幹部マフムード・ウェルファリについて調べている。ウェルファリは多くの戦闘員を殺した罪で既にICCが指名手配しているが、未だに自由の身であるという。画期的なのはSNSからの情報のみでICCから逮捕令状が出されたという事であるという。ウェルファリが逮捕起訴された暁にはこの情報が役に立つという。

The awards for excellence in journalismの会合でイノベーション賞がクリスティアン・トリーベルトに授与された。この受賞はベリングキャットの活動を後押しするが、同時にメンバーがニューヨークタイムズのような企業に雇われる契機になるという。

ロシア元スパイ毒殺未遂事件では容疑者の一人についてベリングキャットが実名と所属を解明し発表した。RTは嘘のインタビューとプーチンの言い訳を流している。

ニューヨーク大学のジェイ・ローゼン教授は語る。民主主義を信じ大切だと考える人々がいる限り、政治の民主性は生き残ります。国民の同意に基づいた政府や開かれた社会、すべての人々が自由に生きる権利、それらが大切だと考えるならばそのために戦わなくてはならないという時代が来たのです。