カンガルーノート (5)

第5章に入る。この辺りからは初期の短編に近い感じになっている。新交通体系研究所という看板を掲げた民家に、変なアメリカ人とトンボ眼鏡が同棲している。そこの空き地に主人公は居候する事になる。民家のそばに踏切があり電車が近づくとRUNの表示が出る仕組みになっている。交通事故を誘発する事によって人口を調節する試みである。

アメリカ人のハンマー・キラーが自説を述べる。

「要約してしまえば、現代の死をもっとも象徴的に現しているのが《事故死》でしょう。《事故死》は明白な自殺であると同時に、明白な他殺でもあるんです。加害者と被害者は仲のいい兄弟さ。死を遅らせるために、死を早めているのが、文明という預金通帳のやりくりでしょう。」

これによって主人公はカレーや牛乳、野菜ジュースにありつけるようになった。著者が入院中に食べたいと思ったものがこうして文中に出てくるのである。