フォークナー 八月の光 (7)

バーデン女史とジョー・クリスマスの関係は一風変わっている。奔放な性的関係が過ぎ去った後、バーデン女史はクリスマスを大学に行かせ、自分の事業の後継者にしようとする。相手の意向もお構いなく有無を言わさないやり方は、当然ながらクリスマスに最大限の反発をもたらすだろう。不可解なのはクリスマスがふらっと旅立てば済んだはずなのにそうしなかったことである。何が起こったかあまり具体的に書くとこのあと読もうとする人に悪いのでこの位にする。

田舎町で起こった猟奇殺人事件には多くの野次馬が集まり、保安官、二匹の犬と応援隊が投入され、物的証拠の拳銃も発見された。犯人を逮捕したものには親族より1000ドルの懸賞金が出されると噂される。真相をだいたい知っているブラウンは懸賞金を貰う気満々である。

捜査の様子を紹介する。

《「白人か?」

保安官が尋ねた。

「そうですとも。ホールの中をよたよた歩きまわってやしたよ。たったいま階段から転げ落ちたみてえに、あたしが二階に行こうとしたら邪魔しましてね。二階にいってみたら誰もいなかったて言うんでさ。でも上がって、降りてみたらもうそいつはいなくなってやした。」

保安官は二人を見まわした。「その小屋には誰が住んでたんだ?」

「誰がいたか分かりません」助手が答えた。

「たぶん黒ん坊でしょうね。聞いたところだと、彼女は自分の家に黒ん坊たちを住まわせていたようですよ。だから彼女がいままでやられなかったのは、不思議なくらいでさあ」

「黒ん坊を連れてこい」保安官が言った。》