このドラマのメインテーマである主婦の不倫については肯定的に書いているわけでも無い。事実家庭は崩壊寸前まで行ったし本人の持つ罪悪感、子にもたらす嫌悪感は実際にはどうにもならない。ただ若い律子は家庭を顧みない夫に責任があるような事を言う。癌で早く死ぬ場合は不倫が救いになるという例も示しているがこれには賛否が言いづらいものがある。
このストーリーが書かれた時の山田太一の年齢(40代半ば)を考えると彼が当時有していた問題意識と、まだ見えていない事柄が透けて見えてくる。早稲田の卒業生としてはミスコンレベルの上智大生はやはり高嶺の花だったのだなと読み取れるし、商社に入ってバリバリ働く事の是非、女子大生の婚前交渉の是非も問題として提起されている。大学に行かず親から独立して働く事については次作の沿線地図でじっくり検討される事になる。
さて見えていない事とは何だろうか。それは50代に訪れる子育てがほぼ終わった頃の夫婦の事である。ここに作者には想像のつかないような幸せがちゃんと待っているというのが私の見解である。だから子育てが終わるまで人生つまらないと思いながら生きたとしても間違っているわけではない。それでいいのである。