失われた時を求めて (25)

こんな事になっている。以下引用文。(吉川一義訳)

《それまで閉ざされていた道が意外にも開かれて、お伽の国を思わせる所領を私は敬意と歓喜に身震いしながらすでに探検しはじめていたが、それはあくまでジルベルトの友人としてであった。私が迎え入れられた王国自体、スワンとその妻がなんとも超自然の暮らしをしているさらに不思議な王国のなかに含まれていた。》

経緯がやや曖昧だがあれほど形勢不利だったプルーストがスワン家に出入りするようになり、オデットに紅茶を入れてもらい会話を楽しむのだ。勿論ジルベルトとも遊んで貰えている。さらにこの様な事態になっている。以下引用文。(吉川一義訳)

《順化自然観察園では、みなで馬車を降りたあと、スワン夫人に寄りそって歩いてゆくのが、私にはどれだけ誇らしかったことだろう!無頓着な足どりでコートをひるがえしながら歩む夫人に私が感嘆のまなざしを注ぐと、それに応えて夫人は艶やかな微笑をたっぷり返してくれる。たまたまジルベルトの遊び仲間の男の子や女の子に出会うと、その子は遠くから私たちに挨拶をする。いまや私は、かつて自分があれほど羨んだ側に回っていた。》

この辺りの展開は事の運びが順調すぎてフィクション色が濃厚である。そもそも主人公の事をプルーストと勘違いしているのは私である。