東洋文庫 日本児童遊戯集 (1901)

本書は明治三十四年、博文館刊行の「日本全国児童遊戯法」全三巻の覆刻である。本文より興味を引いたものをいくつか紹介する。

《東京》

まま事

こは女児の遊戯にして、我が手遊びの玩具などを配列し、勝手道具を並べて炊事の真似やら、菓子などを切り細きて重箱に入れ、恭しく時候の挨拶より、調整したる旨を口上にて述べ立てつつ、隣家の女房に擬したる朋輩に贈るやら、又は赤子の世話に奔走する模様等、観去り観来れば実に一家の世話女房にして、その真面目なるところ真に愛すべく、又その無邪気なるところ実に尊ぶべしと云うべし。

〔甲斐〕

睨めッこ

児童各顔を出し合い、種々の睨め方をなし、敵手をして失笑せしめんと競うなり。始終耐忍強く笑わざる者を以って勝とし、笑声は勿論、微笑を呈する者を敗と定む。

〔磐城〕

籠目籠目

女童の遊びなり。五人或いは十人手を連ねて輪になり、その輪に一人入り、周囲の者声を揃え、連なりたる手を上下へ調子を合せ振り動かし、「籠目籠目籠の中の鳥はいついつ出やる、十日の晩に鶴と鶴とつッ張った」と、唄い終わればこの中に居る一人の目隠ししたる者に周囲の一人の名を当てさせ、名を当てらるればその者代りて又中に入る遊びなり。

陸奥

ねぶた

「ねぶた」は七月七夕祭に用うるものにて、小児の居る家毎に必ず造ることなるが、その体裁、東京の山車の如く、人形を竹にて編み上に紙を貼り、その中に燈を点ずるなり。この人形の大なるときはその年豊穣なりとて太く喜ぶなり。されば小なるものは児童一人にて持ち得るも、大なるものに至りては、これを持つに数十人を要するとなり。これを囃すには「ねぶた流れろ、まめのは止まれ」と云えり。