映画 我等の町 (1940)

自動車が普及する少し前の時代のアメリカの小さな町について、進行役の男がその生活を解説するという映画である。いかにもウォルト・ディズニーヒッチコックの時代らしい実験的な要素がある。

この町が眼を覚ますのは新聞配達、鉄道の音からであり、町は徐々に活気付いてくる。町医者のギブス家、新聞社のウェッブ家の人々がクローズアップされ時代の変化を加えながら素描される。ギブス家のジョージ、ウェッブ家のエミリーがハイスクール卒業後に結婚し、ジョージが叔父の農場を継ぎ、エミリーが子供を二人産むまでが描かれる。

兵役で戦死した新聞配達、アル中で自殺したオルガン奏者などネガティブな話も出るが概ね町は平和で人々は敬虔である。後半は人々は死ぬと霊魂となり丘の上に集うというスピリチュアルな映画になっている。エミリーについて最後にどんでん返しがあった。

全編コープランドの音楽が流れている。コープランドアメリカの国民的作曲家でその作風は調性音楽だが長調短調が曖昧なもので、ある種ユートピアを思わせるような音楽である。