映画 ドライブ・マイ・カー (2021)

3時間もある映画なので6つくらいの話に分割して概要を語りたい。

第1話 夫婦の話

主人公の悠介はトランス状態の妻の寝物語を録音機のように記憶して、翌日妻に話して聴かせている。話は性的に際どい内容のものが多い。妻はこのようにして脚本家として成功を収めている。悠介は世界的にも認められた舞台俳優である。

冒頭から異様な夫婦生活が描かれており、挿入されるエピソードも死んだ娘の法要などネガティブな物が多い。悠介が海外の演劇祭に招かれたという設定のシーンがあるが、成田空港の実写と電子メール1本で済ませている。ロシアで演劇祭を準備して撮ればもっと本格的な映画になるだろうにと思った。悠介が間男されるというシーンがあるが。あとで意味を持ってくる。その後妻の音は自宅で変死する。

第2話 広島国際演劇祭

あれから二年後、悠介は広島国際演劇祭に特別演出家として招かれ、愛車のサーブを駆って会場のパーキングに到着する。迎えに現れたのは日本語を話す韓国人スタッフだった。ホテルから会場まで車で移動するつもりだった悠介は、専属ドライバーを付けねばならないという運営側の条件に驚き困惑する。だが結局付けざるを得ないのである。ここからはオーディション、本読みと演劇に関する内容がほとんどである。車中でのカセットテープを使った悠介のセリフの稽古では棒読みがますます目立つようになる。顔も疲れているように見える。俳優としてオーディションに合格した高槻が現れて、キレ易い性格の片鱗を見せる。

第3話 関係者の交流

悠介は韓国人スタッフの家に招待され、手料理を振舞われる。悠介は嫌な予感がして最初は断ったが押し切られた。実は彼の妻は今回のオーディションに合格した聾唖の女優だったのである。二人で大型の犬を飼っている。専属ドライバーのみさきは同席していたが話の輪に入らず無表情で、犬に興味を示していた。

稽古で嫌な事があった悠介はみさきに何処でもいいから車を走らせてくれと頼む。車はゴミの焼却場へと向かう。まあ二人とも実存モードなので別に悠介は驚きもしなかったが、海岸へ行き二人は煙草を燻らせながら身の上話をするのである。どちらも悲哀感と惨めさを漂わせている。シュールな笑いがあるかと思えばそれもない。

第4話 悠介と高槻

車の中で音をめぐっての二人の会話がある。ドヤ顔で長々と語るわりには名セリフでもなく、ストーリーの説明のような会話だった。これでは見る方が想像する部分を無くしたばかりでなく、変な思い入れを押し付けられたようにも感じる。話の要点だけ言えば俺は音を寝取ったよということになる。

第5話 意外な結末

舞台でのリハーサルでOKが出ていよいよ公演という段階で高槻は傷害致死容疑で逮捕される。これの伏線はいくつも入れられてはいるが、まあこれは取ってつけたような展開である。公演を中止するかどうか考える為、悠介はみさきの故郷北海道へドライブする事を決断する。随分長い時間同乗するので話す時間は有り余るくらいである。だが一体この二人の関係性で何か話す事があるのだろうか。

第6話 長いドライブ

高速とフェリーを使って車は翌日には北海道の大地を走っていた。今では随分景色が変わっている生家の跡を訪れ、亡くなった母に花を手向ける。ドライブ中の会話、北海道の風景の中での会話はいわゆる自分語りが主であるが、まあこれは悪く言えば供述調書の朗読、良く言えば2時間ドラマの結末部分である。

この原作にないドライブはETV特集 薬禍の歳月 〜サリドマイド事件・50年〜 (2015)のMさんの話に少し似ている。またみさきの釜山でのドライブはクリント・イーストウッドの映画 グラン・トリノ (2008)の結末部分と重なるところがある。