映画 雨上がる (2000)

観終わった感想だけつらつら述べてみる。

黒澤明監督作品の重厚な味が出せているのか、という目線で見るとこの映画が軽い感じがするのは否めないだろう。役者そのものの醸し出す重厚感というのもあるだろうし、演出についても黒澤明監督の頭にあるような方法論とは違ったもののような気がする。登場人物の物の考え方が近世的ではなく現代寄りなのだ。

江戸時代となれば理不尽な事も多いだろうし、個人主義的なものはすぐ排除されてしまうだろう。社会の仕組みもガチガチで、例を挙げれば近松門左衛門の心中物のような展開が本当に近いのである。原作の山本周五郎のヒューマニスティックなストーリーをさらに甘口にしているので一般向けにはいいかもしれないが映画の完成度はむしろ落ちている。

黒澤作品が唯一無二である事がよくわかる事例である。