エトルリア ローマ帝国に栄光を奪われた民族 ヴェルナー・ケラー著 坂本明美 訳(1990)

  紀元前8世紀頃に今のトスカナ地方に出現し12の都市群を建設、ティレニア海を支配した民族がエトルリア人である。特異な円形の陵墓が作られ多くは盗掘されたが残された墓からおびただしい副葬品が出土した。これらはチェルヴェテリとタルクィニアのエトルリア古墳として世界遺産に登録されている。

  今のローマを建設したのも彼らであるが(紀元前575年)やがてローマ帝国との抗争に敗れ紀元前40年にローマに吸収された。エトルリア人の残した書物エトルリア関係の著作はローマとキリスト教会により全て破棄され歴史からは消え去ったという。だが近年考古学による調査により全貌が明らかになりつつある。

  エトルリア文明の特色としては石でできた道路、アトリウム様式の住居、黒色陶器、青銅器、鉄器、フルート、ラッパなどの楽器、失われて現存しないエトルリア法典、 解読が進んでいないエトルリア語などがある。

  数々の戦争を行なっている。シラクサ艦隊、ギリシャ人、ケルト人、カルタゴ
、ローマと相見えて闘ったが最期はローマの軍事力に敗れ都市は破壊され廃墟となりほとんどは地中深く埋まっているという。

  著者はドイツ人で司法書士を経て出版業を営み独自の研究により本書を執筆した。不思議なくらい詳しく書かれている。エトルリア関連所蔵品はベルリンのペルガモン博物館に数多く置かれているという。