岩波文庫 ユグルタ戦争 カタリーナの陰謀 (3)

いよいよ本題に入って行くのだが筆の勢いが凄かった。当事者しか知り得ないようなやりとり、一字一句写し取られたような演説、湧き上がる恐怖心などが描かれている。ユグルタ及び買収されたローマ側の高官たちは随分あくどいことをやったものだ。だがそういう事をやれば地獄に真っ逆様に落ちて行くのが世の常なのだ。

《このヌミダエ人はすみやかに命令を実行し、言われたとおりに夜、ユグルタの兵士らを呼び入れた。彼らは建物の中に突入すると、幾手にも分かれて王を探し、ある者は眠っているところを、ある者は手向かってきたところを殺し、隠れ場を隈なくあさり、閉ざされた場所に押し入り、すべてを喧騒と混乱に投げ込んだが、そうこうするうちにヒエムブサルが、女の召使いの小屋に隠れてるところを発見された。そこに彼は怯えてとっさに、勝手もわからず逃げ込んでいたのだった。ヌミダエ人たちは命令どおりに彼の首をユグルタのもとに届けた。》

こうしてユグルタはミキプサの息子の一人を葬り去った。勝った者が正義になるというのが戦争だが、ローマの監督下に置かれているヌミディア王国の場合はちょっと違っていて元老院による裁定が待っている。