映画    砂と霧の家 (2003)

  革命を逃れてイランからアメリカに亡命してきたベラーニ大佐の一家は昔の恵まれた生活とは打って変わって霧の多い沿岸の都市でひっそりと暮らしていた。心労で打ちひしがれている妻と家族を守るためベラーニは昼は道路工事、夜はストアの店員をやりながら上流の暮らしを維持しており最近やっと娘を嫁がせた所だった。だがまだ息子を大学にやる為の資金を稼がねばならないし妻の為にオーシャンビューの別荘をと考えている。ある日ベラーニは競売物件で絶好の家を見つける。相場の4分の一の値段で買取り住んだ後秋には転売する心算だった。何も問題無いはずの一家の合法的な活動にとんでもないイチャモンが降りかかってくる。

  それは暴力団などでは無く一般市民であり行政と司法だった。この家を父から受け継いだ娘のキャシーはアル中で離婚、郡の督促状を無視しているうちに家を競売にかけられてしまったのだ。退去となったキャシーは車で友人の家を転々としながら弁護士に相談する。弁護士はベラーニ側に競売価格で家を返還するよう通告するがベラーニは拒否する。言うとおりにすれば崖っぷちにある家族が崩壊してしまうからだ。弁護士はこれはやばい案件だと悟るが無学のキャシーは感情的になり行動を起こす。

  改築中の家に押しかけたり恋人の副保安官に相談しこれが又無学の男で彼らを弱みのある移民と思って脅しをかける。これが図星でありベラーニの元の仕事は大佐などでは無くシャーを守る秘密警察だったのだ。イランに強制送還されれば死刑になる。この事は家族にも秘密にしてある。さて副保安官の家庭も妻との不仲から崩壊寸前でありいよいよ家を出て行きキャシーと住もうとする。二人は中古の家を見つけ副保安官はそこから出勤し始めるが妻との話し合いのために半日帰るという。話し合いは平行線のようだがその最中に副保安官が上司から呼び出しをくらう。民間人を脅したことがバレ事情聴取される事になる。

  副保安官が帰ってこない事に動揺したキャシーは車でベラーニの家に押しかけ拳銃自殺を図る。ベラーニ大佐はキャシーを助け家で寝かせるが酔っ払っているキャシーは又も服毒自殺を図る。毒と言ってもベラーニ家にあった睡眠薬か何かである。すぐに吐瀉させ寝かしつけている所へ副保安官が窓ガラスを割って現れる。副保安官はテーブルにあった拳銃で一家を脅しトイレに監禁する。不法侵入と監禁である。キャシーは酒と薬でラリっており自分が悪いのだとうまく言えない。副保安官は警察に通報もせず翌朝になってベラーニと息子を従えて役所に向かい返還手続きをさせようとする。だが役所の入り口でトラブルとなり息子が警官に射殺された。

  実話なのか傷ついた鳥の寓話なのか。なかなか意味の深い話だった。