吉田秀和 名曲のたのしみ 2012年6月23日放送分

時報

(女性アナの声で) 名曲のたのしみ。41年にわたって解説を担当された音楽評論家の吉田秀和さんが去る5月22日お亡くなりになりました。この時間は今年4月に収録したラフマニノフその音楽と生涯の第25回をお送りします。

名曲のたのしみ吉田秀和ラフマニノフはこの前も申し上げたようにヨーロッパの戦乱を避けて彼はアメリカに移住するようになって行きます。と言っても勿論ヨーロッパの各国を巡って移動しながら演奏旅行に忙しくするということは変わりませんでした。そのために作曲の時間が無くなったと言ってとても困ってはいたんですがそれでも夏休みやなんかを利用して彼は作曲をしてます。で、そこから生まれた一つの作品にパガニーニの主題によるラプソディー作品43というのがあります。これはピアノとオーケストラのための曲で1934年の夏の作曲でした。ラフマニノフはその頃61歳になっています。で、これは前に聴いたコレルリの主題によるバリエーションの後を継ぐようなものですけれども作品としてはさらに一段と成熟味を増したものでソ連以来の成功作としていままでずっと残っています。

彼はこのほかにまだショパンの主題による変奏曲も書いていますけどその中でもこのパガニーニの主題によるラプソディー狂詩曲これが一番の成功作品かもしれませんね。このパガニーニの主題は聴けば皆さん方すぐお分かりになるようなソロバイオリンのための狂詩曲の作品1の最後にあるものですけれどもラフマニノフの前にもブラームスがこれを主題としてとっても難しいまるであのうピアニストの指を壊したくなったようなそんな変奏曲の一連の変奏曲を書いたりしてますけれどもラフマニノフのは難しいけれどもそういう無理って言うんでは無いみたいですよ。で、その中にはラフマニノフの作った旋律がうまーくのっててこれがまたうーんピアノコンチェルトの第2番のそうであるように聴く人の胸にジーンとこう迫ってくるようなラフマニノフ流のメロディーの表現力が強い節があって或いはグレゴリオチャントの中の怒りの日を引用したものとかなかなか賑やかでいろんな材料が詰まっているようなものです。だからこれをラフマニノフは平凡にパガニーニの主題による変奏曲と言わないでパガニーニの主題によるラプソディーと呼んだのかも知れませんね。ひとつ全曲続けて聴きましょう。ランランのピアノソロとゲルギエフ指揮マリンスキー劇場オーケストラの演奏です。〜音楽〜

今聴いたのは云々。この曲をめぐっては私がこれまで何度も参照して教えられてきたバジャーノフという人の伝記に興味深いエピソードが書かれています。それによるとバレエの演出家のフォークンがこの曲を使ってバレエ パガニーニというのをロンドンで上演しようと考えた。で、ラフマニノフもそれに興味を示していろいろ考えてフォークンにこんな手紙を書いてます。夜中筋を考えて思いついたんですが技巧の完成と女性のために悪魔に自分の魂を売ったというパガニーニをめぐる話を使ったらどうでしょうか、それを使って面白いバレエが出来るんじゃないでしょうか。で、実際この曲を使ってバレエは大成功を収めます。そしてさっきも申し上げた神の怒りの日 Dies irae を使ったところの反響なんかは本当に悪魔の権化みたいなものですけれども悪魔の大演奏会を突然、沈黙が訪れたりいろんな変化に富んだ面白いバレエになっている、しばらくの間はこのバレエを一八番にしたいろいろの人が踊りいろいろな人がこれを楽しんだようです。じゃ、さっき聴いたランランとは対照的な作曲家ラフマニノフのピアノソロでもってストコフスキー指揮フィラデルフィアオーケストラの演奏でこの曲もう一度初めからじっくり聴きましょう。〜音楽〜

今のは云々。まだすこーし時間があるのでエレーヌ・グリュモーのピアノソロでもってラフマニノフの練習曲音の絵、作品33からハ長調アレグロ嬰ハ短調のグラーヴェ、これを聴きましょう。〜音楽〜

今のは云々。今日はその前に云々を聴きました。それじゃまた来週。さよなら。

名曲のたのしみ。お話は吉田秀和さんでした