失われた時を求めて (124)

複雑怪奇なるヨーロッパ情勢もシャルリュス氏によれば簡明に解釈できる。以下引用文。(吉川一義訳)

《「この種の有力な推測は、コーブルクのフェルディナントの場合と同じくヴィルヘルム皇帝にも当てはまるので、フェルディナント国王が「残忍な帝国」の側についたのはそれが原因かもしれませんぞ。まあ結局無理もない、おねえ相手じゃつい甘くなって、なにもかも言いなりですからな。ブルガリアとドイツの同盟を説明するのに、これはなかなか気の利いた解釈だと思うのだがねえ。」》

この小説が長いのは筆者がとめどなく脱線するからで、筆者自身このように釈明しているのである。以下引用文。(吉川一義訳)

《フォルシュヴィル夫人にかんする余談のついでに、私がシャルリュス氏と並んでグラン・ブールヴァールをくだっているあいだに、もうひとつの余談を差し挟むのを許していただきたい。それはヴェルデュラン夫人とブリショの関係をめぐるさらに長い余談で、この時代をえがくのに有益だからである。》

9ページほど余談が続いた後、16ページもあるシャルリュス氏の大演説(プルーストとの会話)が登場する。内容はある程度参考になるが、大げさな空疎なものである。