失われた時を求めて (126)

なにが起こっているかというとあのジュピアンが男性専用娼館をシャルリュス氏のために経営していたのである。以下引用文。(吉川一義訳)

《「私のことで間違った評価をなさらないでいただきたいのです」とジュピアンは言った、「この商売じゃ、想像なさるほどには儲からないんです、まともなお客も泊めなくちゃなりません、もちろんそんな客ばかりでは金を食うだけになるでしょう。ここはカルメル修道会とは逆でして、悪徳のおかげで美徳が生きているんです。いや、私がこの館を引き受けましたのも、ひとえに男爵のお役に立ち、男爵の老後をお慰めするためなんです。」》

家に帰ったプルーストはフランソワーズと給仕頭のやりとりについて述べた後この小説の成り立ちの骨子となるような事柄に言及する。以下引用文。(吉川一義訳)

《この本には虚構でないことがらはひとつもなく、「実在の人をモデルとする」人物はひとりも存在せず、すべては私が述作の必要に応じて創りだしたものであるが、身寄りのない姪の手助けをするために隠遁の地から出てきたフランソワーズの大金持ちの親戚一家だけは実在する人物であることを、わが国の名誉のために言っておかなければならない。(略)その名前は、これがきわめてフランス的な名前であるが、ラリヴィエールという。》

このとってつけたような言及は一体何だろうか。小説も終盤になってかなり筆が鈍っているのかストーリーが稚拙になっている。特にジュピアンの娼館のあたりは少年少女文学かと思うレベルである。