岩波文庫 死に至る病 (1849)

デンマーク実存主義哲学者キルケゴールの著作である。少し引用するとよくわかるが、死と絶望の語句をもてあそんでいるように見える。(p32)

《さてこの究極の意味において絶望は死に至る病である。ーー自己のうちなるこの病によって我々は永遠に死ななければならぬ、我々は死ぬべくしてしかも死ぬことができない、いな我々は永遠に死なねばならぬ、我々は死ぬべくしてしかも死ぬことができない、いな我々は死を死ななければならないのである。何という苦悩に充ちた矛盾であろうか!一体死ぬというのは、過ぎ去ってしまうことを意味する、けれども死を死ぬるというのは、人がその死を経験することを意味するのである、ーーほんの一瞬たりともこの死を経験するものは、それによって永遠に死を経験することになるのである。 》

結構長い論文であるが、本人が解説しているように『死に至る病』と『絶望』という言葉自体本来の意味では使われていないというのが味噌である。