岩波現代文庫 無罪を見抜く (2)

著者が最高裁の調査官になった時の仕事について語られている。とても面白いので紹介する。

《ーー具体的な仕事の内容はどういったものですか。

木谷 やり方は、週に一遍、その一週間に提出された上告趣意を読みながら事件を「選別」する日があるんです。それは各調査官室の回り持ちでやります。上告趣意書が来ると、各調査官室で一週間分まとめてみんなでバーっと読んで、その難易度によって、「粗選別」するわけです。

まず、事実誤認を主張している事件は、基本的には最高裁では取り上げないことになるので、「X」(バツ印)です。また、量刑不当だけしか主張していない事件は、最高裁ではほとんど相手にされないから、「△」(三角印)を付ける。憲法違反など色々言っていても、結局、量刑不当に帰着する事件も「△」です。他方、重要な法律問題を含んでいる事件や判例になりそうな事件、あるいは事実認定でも「かなり微妙」と思われる事件には「◯」(丸印)を付けるんです。それ以外に、超特大の事件や極めて難しい法律問題を含んだ事件には、「◎」(二重丸印)を付けます。》

とても合理的なやりかたで感心した。まさかとは思うが大穴の事件には☆を付けた調査官がいたかもしれない。そういうエピソードは無かったのだろうか。