この映画は『硫黄島からの手紙(2006)』と視点が逆になっているというユニークな作品である。両者ともスティーヴン・スピルバーグが関与しているだけあって実写の迫力は素晴らしい。
戦争映画ではあるが、力点はあの摺鉢山制圧後、海兵隊員らが星条旗を山頂に立てるところを写した一枚の写真の方にある。この写真が新聞に載ると、まだ戦時中でありながらこの隊員たちが呼び戻され、国債を買いましょうキャンペーンの全国行脚が行われるのである。このようなドラマの場面も演出は適切であり、登場人物の微妙な心理まで描かれている。
ハイライトはスタジアムでの模擬掲揚シーンで、スタジアムは大歓声に沸いた。その時に流れていたのはスーザの雷神である。この時隊員の一人にPTSDの様な症状が出たようで、当時の知識レベルでは致し方ないにしても、上官から酒癖が悪いと叱責されるというトラブルがある。
『硫黄島からの手紙』に照応する様なグロテスクなシーンも用意されていた。さすがにクリント・イーストウッド監督の演出だけあって、ペーソスと真実が散りばめられた、長いのが気にならない楽しめる映画だった。