近年ウクライナ東部で親ロシア派武装集団とウクライナ政府軍との間で戦闘が行われ9000人が犠牲になった。このドキュメンタリーはウクライナとロシアの当時のニュース報道を検証したものだ。
討論番組、バラエティ番組が紹介される。両国の間の溝が深いことがわかる。2014年に起こったウクライナ政変、ロシアによるクリミア併合がきっかけで両国の対立が激しくなる。ロシア国営テレビのキャスター ドミトリー・キセリョフがプロパガンダを行ったとしてEUから制裁を受ける。NHKが彼を取材すると彼は報道の中立性を堂々と否定した。比較的自由だったウクライナ国営テレビ、民間局も姿勢を一変させロシアを批判する。民間局キャスター アーラ・マズールは愛国心が報道の客観性に優先する事もあると言う。
2014年4月戦闘が開始する。ロシアを後ろ盾とする親ロシア派武装集団が蜂起しウクライナ政府軍が鎮圧に向かう。ウクライナ民間局のキャスター オレクサンドル・ザホロードニーは従軍記者としてニュースを届ける。2014年6月に起きたウクライナ東部ルガンスクにおける爆破テロでは両者の報道は正反対に別れた。ウクライナ側は親ロシア派のロケット弾による砲撃と言い、ロシア側はウクライナ政府軍の空爆だと言う。これについての検証は今回は無い。
ウクライナ東部からキエフに避難した家族がいる。息子夫婦はキエフに避難したが父親はロシアに避難した。ロシアのテレビを信じたからだと言う。何故か現場にいたという息子の言う事を信じない。父親には独自の判断があるようだ。
2014年5月オデッサでがデモがエスカレートし労働組合会館が焼き討ちされロシア系住民40人が死亡するという事件が起こる。ロシアの民間局がこの時の映像に事実とは異なる扇情的なキャプションを付けて放映する。この事で志願兵が増加したという。NHKスタッフはこの映像を撮ったフリージャーナリストを探し出し真実を伝えている。
またセルゲイ・ボイチェンコはロシア国営テレビで放映された妊婦の殺害映像に義憤を抱き志願兵として戦闘に参加し、その後右腕を負傷して帰ってきた。NHKは妊婦の写真を撮った女性を探し出し実は妊婦でなかった事を突き止めセルゲイ・ボイチェンコに知らせるが彼の心情はそれでも変わらなかった。
ロシアのセルゲイ・エルジェンコフ記者はロシア人志願兵のその後を取材しドキュメンタリーにしようと考えている。シベリアのカミシロフに向かい元志願兵と面会する。彼は片足が義足である。帰還当時は英雄として持て囃されたが今は厄介者である。国からは負傷者用の杖が贈られただけという。
NHKはこのドキュメンタリーでプロパガンダ報道の危険性について検証したが当事者である限りこの様な報道は避けられないという結論に至っている様に見える。