映画 草の乱 (2004)

秩父事件(1884)の発生とその顛末を描いた映画である。国会開設前夜の自由民権運動の盛り上がりの中で経済的に困窮した農民が蜂起して高利貸しと役所を襲った事件である。この少し前に群馬事件、加波山事件が起こっている。当初から関与していた自由党秩父事件の前に解党している。

丸井商店の井上伝蔵(緒形直人)は生糸の仲買人で農民の生糸を大宮や横浜で売りさばいていた。今年も生糸相場は暴落しており生産農家は困窮し商売を畳む農家が続出する。井上らは秩父困民党を組織して借金と租税の減免を図ろうとするが高利貸しと裁判所が結託しており差押え状が乱発されるという状況になる。薩長の藩閥政府による専制を打破するとして秩父、上州、長野、甲府、茨城、千葉の農民が同時に蜂起して政府の転覆を図ろうという目論見も上手く行かず自由党からは梯子を外される。

結局井上らは10月31日に蜂起し高利貸しを襲い証文を焼却し警官隊と乱闘になる。これは猟銃、刀、槍で武装し選出された総理、副総理、参謀長、会計長で組織されており反乱軍に限りなく近い。中心部の秩父宮郷に集結したのはいいが中山道を上って首都に攻め入るか解散するか判断を迫られる。結局二手に分かれ埼玉方面と信州方面の峠を越える際に政府軍に撃破され何人かは捕らえられる。首謀者のほとんどは死刑となったが井上伝蔵は二年間蔵に隠れたのち北海道に渡り偽名を使って所帯を持つ。死の直前に家族に本名を名乗り秩父事件の事を話して世を去った。

まあこのような悲劇を描くにあたってはユーモアの要素が無いと重苦しいだけの映画になってしまう。案の定、重苦しかったが埼玉方面に向かった一隊が政府軍に大砲を一発ぶっ放して逃げ去ったのが唯一ユーモラスな場面である。