失われた時を求めて (61)

プルーストの上から目線が炸裂する。以下引用文。(吉川一義訳)

《とはいえ氏は社交人士よりも格段に優れていたから、社交人士とそのありさまを会話の材料にしてはいたが、だからといって社交人士から理解されてれいたわけではない。芸術家ぶってしゃべる氏にできたことは、せいぜい社交人士のまことしやかな魅力をとり出すことくらいである。もっともとり出すといっても芸術家たちのためにそうするだけで、いわばエスキモーのためにトナカイが果たすのと同じ役割を芸術家のために果たしていたといえよう。》

ペンで復讐しているのである。

シャルリュス氏から仄めかされたゲルマント大公夫人の邸宅の素晴らしさをいよいよ確かめる時がやって来る。果たして「アラディンの宮殿」がどうか。ところが招待状について疑念を抱いたプルーストは、その当日になってゲルマント夫人邸を訪問する。招待の真偽を確かめてもらいたいと思ったのである。その日はスワンもマルタ騎士団の資料を持ってオリヤーヌに会いに来ていた。そこで仄めかされたのはスワンの健康状態が思わしくなく、あと数ヶ月の命しかないという事だった。