東洋文庫

東洋文庫 中国社会風俗史 尚秉和著 秋田成明編訳 (1938)

中華民国時代に著された風俗、制度の全史である。著者の尚秉和は進士に合格後、官職を経て研究者となった人である。記述は冠髪、衣服、履物、飲食、住居から始まり、冠婚葬祭、制度に及んでいる。一部抜粋する。 紙 昔の紙はいわゆる「竹帛」であって、みな…

東洋文庫 歎異抄 (1300年頃)

本書は親鸞遷化後に弟子によって書かれた親鸞の教えである。 読んで行くと、例えばこの辺りが本質をついているのではないかと思う。 以下引用 二 あなた方が、十余の国々の境を超えて、いのちがけで訪ねておいでになったおこころざしは、ただひたすら極楽に…

東洋文庫 道教 (1945)

本書はフランスの東洋学者アンリ・マスペロの長年の研究資料を元にP・ドミエヴィルが本にまとめたものである。アンリ・マスペロはナチスに連行され61歳のとき収容所で病死している。 本書は充実した深い内容を有し道教研究の古典とも言われている。以下本文…

東洋文庫 戦国策 1 (前1世紀)

戦国策は前漢の劉向(りゅうきょう)が編纂、命名したもので、本書はその現代語訳である。 秦による焚書坑儒の後にこうした書が出てくるというのは興味深い。 冒頭の〔はこべない献上品〕は「九鼎」、「鼎の軽重を問う」に関連した故事となっていてやや面白…

東洋文庫 騎馬民族史2 正史北狄伝 (7〜11世紀)

鉄勒伝 これは隋書、旧唐書からそれぞれの鉄勒伝を抜粋したもので、それの現代語訳及び訳注である。鉄勒は中国北方に広く住んでいたトルコ系遊牧民で居住地は東はバイカル湖南方から西はカスピ海北方に至り、この中から出てきたのが突厥である。 以下引用 隋…

東洋文庫 維摩経 (406)鳩摩羅什訳 石田瑞麿重訳

伝聞に基づく説話風に語られる。ある時ヴァイシャーリー市に維摩という資産家がいた。よく修行し悟りを得て神通力も持っている。その力は菩薩とほぼ互角であり帝釈天、梵天、四天王に敬われている。 だがある時維摩は病気を装い、見舞いに訪れた人たちに身体…

東洋文庫 朝鮮の料理書 (16〜18世紀)

「飲食知味方」は儒学者李時明の夫人の張氏による手作りの本で古文書として発掘されたものである。1650年過ぎに書かれたと推測されている。一部を紹介する。 I 麺と餅類 12 水餃衣法 (餃子の)中に入れる野菜としては、しいたけ・松茸・きゅうりを細かくき…

東洋文庫 黄色い葉の精霊 ベルナツィーク著 (1951)

本書はオーストリアの民族学者フーゴー・アードルフ・ベルナツィークによる調査紀行でインドシナ半島の少数民族について探査したものである。黄色い葉の精霊とはピー・トング・ルアング族のことである。写真も資料として撮ってあるが事物を描写する文章が素…

東洋文庫 人倫訓蒙図彙 (1690)

中村惕斎によって訓蒙図彙全20巻が1666年に出版され、こちらはその後に出された類書である。本書は全七巻よりなる絵図付きのいわゆる百科全書である。巻一より冒頭の一部を紹介する。 巻一 上貴き公卿より、庶人の賤しきに至るまでの、其所作を、くわしく家…

東洋文庫 中国の酒書 (1114年頃)

「北山酒経」は北宋時代の酒造法を詳述した書である。著者の朱肱は湖州(今の浙江省)の生まれで進士になった後政府高官を勤めたが早く引退し杭州に居を構え著作に励んだ。 巻上にあるエッセイ風の文を紹介する。(一部表記を変更した。) 酒の、世における…

東洋文庫 夢渓筆談 (1090年頃)

北宋の役人だった沈括は55歳の時鎮江府に隠遁し本書を著した。まずは自序を引用する。 自序 わたしは林間に隠退し、奥に閉じこもって人づきあいを絶ちました。平素、客人と話したことを思いうかべて、折にふれてはふとあることがらを書き記すと、その人と向…

東洋文庫 女大学集

本書は女大学関連図書のうち九篇を収録したものである。今日、女大学といえば享保元年(1716)に登場した『女大学宝箱』の本文の部分を指すことが多い。その中の本文と福沢諭吉による評論を紹介する。一部漢字表記は変更した。 5 女子は、我が家に有りては、…

東洋文庫 明治大正史 世相編 (1931)

朝日新聞社によって企画・刊行された本書は当時朝日新聞論説委員だった柳田國男の書き下ろしであり、独創的で味わい深い作品になっている。冒頭ではこのような趣旨を述べている。<世相とは時代の変わり目で一変するが、目に見える色、耳に聞こえる音で気づ…

映画 悪魔の追跡 (1975)

仲良しの2組の夫婦がキャンピングカーでコロラドを目指して出発する。ロジャー(ピーター・フォンダ)とフランク(ウォーレン・オーツ)はバイク整備工場の共同経営者でありバイク乗りである。ロジャーがバイクレースに出場し勝利した後、バカンスを満喫す…

東洋文庫 大河内文書 明治日中文化人の交遊 (1877〜1881)

元高崎藩主で華族の大河内輝声(てるね)という人が東京に来ている中国人との交遊を通じて筆談の文書を残している。これはその日本語訳である。一部を抜粋して紹介する。漢字とかなの表記は改変した。 明治10年12月23日浅草凌雲閣にて (略) 輝声 私は姓は…

東洋文庫 日本教育史 1 (1890)

本書は神代から明治20年までの日本の教育史を記したもので当時の師範学校教科用書である。文部省総務局図書課の佐藤誠実氏により編纂された。なんとなく手に取る気がしない題名であるが読んでみると意外と面白い。一部を紹介する。 第一篇総説 (略) 応神天…

東洋文庫 蜀碧・揚州十日記他 (1742)

「蜀碧」は明末において農民反乱軍の首領である張献忠が四川に侵入して重慶、成都を陥落させ大量虐殺を行った史実についての記録である。官軍と戦って転戦しながら重慶を陥すところまでが滅法面白い。そのくだりを紹介する。 ◯6月20日、賊は重慶を陥れ、瑞王…

東洋文庫 生命のおしえ 民衆宗教の経典・黒住教 (1828)

本書は幕末三大宗教の一つ黒住教の教書で歌集と文集よりなる。教祖の黒住宗忠は備前国の神職の生まれで、「自ら神のような人間になり広く人々を救う」という大望を抱き修行を開始し「日々家内心得の事」をまとめ、信者の規範とした。その全文を紹介する。 日…

東洋文庫 懲毖録 ちょうひろく (1600年頃)

本書は李氏朝鮮の高官であった柳成龍が記した文禄・慶長の役の詳しい記録である。日本からの使者との折衝および朝鮮側の鈍い反応、日本の驚くほど迅速な侵攻、緒戦で打ち破られると恥も外聞もなく逃げ出してしまう朝鮮正規軍の振る舞いについて述べられてい…

東洋文庫 薩摩反乱記 (1879)

本書はイギリス公使館書記官として日本に滞在していたマウンジーによる"The Satsuma Rebellion, London(1879)" を当時の日本の翻訳官が訳出したものを現代仮名遣いに書き換えたものである。内容は幕末の政治状況から説き始め西南戦争の全容を記したものにな…

東洋文庫 鳩翁道話 (1835)

18世紀初頭に興った石田梅岩の心学を弟子たちが全国の講舎などで庶民に口頭伝道したものが所謂道話というものである。その中の白眉と言えるのが本書の鳩翁道話と云われている。その実物をいくつか紹介する。 さざえの自慢 (略) あのさざえが何ぞというと…

東洋文庫 真臘風土記 アンコール期のカンボジア (1300年頃)

著者の周達観は元の使者として1296年に真臘(カンボジア)を訪れ翌年帰国している。これはその時の記録である。真臘と占城は1285年から元 に入貢している。 本文では先ず真臘の場所について船で行く行程が記され、聖天子(成宗)の命により今回の業務が行わ…

東洋文庫 看羊録 (1658)

著者の姜沆は慶長の役で捕虜になり1557年〜1560年の間日本に幽閉されていたが、無事に帰国しこの書を著す。東洋文庫では日東壮遊歌 (1764)、海游録(1719)という江戸時代の日本の事が書かれたものがあるがこれは安土桃山時代と重なる貴重な報告書である。…

東洋文庫 幕末政治家 (1898)

著者の福地源一郎は長崎出身の旗本で維新後は新聞の創刊、翻訳、戯作、小説執筆と多彩に活動し政治家としても活躍した。本書は著作の中の一つで歴史を扱ったものである。老中阿部伊勢守、水戸老公、島津斉彬卿、堀田備中守、井伊直弼、水戸斉昭、安藤対馬守…

東洋文庫 新猿楽記 (2)

著者の雅楽についての博識ぶりを示す章がある。 [28] 九郎ノ小童ハ、雅楽寮ノ人ノ養子タリ。高麗、大唐、新羅、大和ノ舞楽、尽ク習ヒ畢ンヌ。生年十五ニシテ、既ニ此ノ道ニ達セリ。笙・篳篥・簫・笛・太鼓・鞨鼓・壱・腰鼓・フリ鼓・摺鼓・鉦鼓・銅鈸子等…

東洋文庫 新猿楽記 藤原明衡(1052)

平安時代の文化が爛熟して崩壊する前夜の庶民の活動の有り様を衛門尉が書き記したという形式で綴られる読み物である。著者は藤原明衡とされている。冒頭の部分の現代語訳を示す。 わたくしは、この二十何年以来、東の京、西の京にわたってずっと見てきている…

東洋文庫 通俗伊勢物語 (1678)

本書は紀暫計による『伊勢物語ひら言葉(1678)』及び也来による『昔男時世妝(1731)』の二つの本を収録したものである。源氏物語が作り物なのに対し伊勢物語は在原業平の実録であることから人気が高く江戸時代においてもこの様な本がでているのである。 ど…

東洋文庫 南洋探検実記 (1892)

井上外務卿は日本人殺戮事件の調査の為外務省の職員をマーシャル群島に派遣することにした。その時の辞令である。 御用掛 後藤猛太郎 今般濠斯太剌利亜地方へ派遣申付候事 明治一七年七月二十八日 かくして後藤猛太郎及び本書の著者である鈴木経勲ら一行は、…

東洋文庫 松本良順自伝・長与専斎自伝 (1902)

松本良順は江戸時代末期から明治にかけて活躍した蘭方医である。当時は蘭学を学ぶ事は至難であり、やはり多紀楽真院の妨害を受けている。本文には陽だまりの樹を彷彿とさせる様な史実が並んでいる。部分を抜粋する。 (略) 幕府創業の制は、習慣上より、医…

東洋文庫 大本神諭 火の巻 (1920)

本書は大本教開祖出口ナオの御筆先を出口王仁三郎が編集したものである。御筆先とはいわゆる自動筆記によりひらがなで書かれたもので艮の金神が憑依したとされている。内容は終末論的な内容を含み社会批判、政治批判も見られたため教団は政府により弾圧され…