プルースト

失われた時を求めて (51)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)帰り際、名文句が登場する。以下引用文。(吉川一義訳) 《夫人のかたわらにはゲルマント氏が、威風堂々と、どっしり腰をおろしている。おのが莫大な財産への意識があまねく五体にゆきわたり、全身の密度はことさ…

失われた時を求めて (50)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)この茶会はとんでもない。スワン夫人が現れたと思うと、シャルリュス氏も現れる。内容を実況する。以下引用文。(吉川一義訳) 《シャルリュス氏はほどなくスワン夫人のかたわらに腰をおろした。どんな会合に出て…

失われた時を求めて (49)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)ブロックが退出したあと、ベルギーについての話題になるが、その時マルサント伯爵夫人(サン=ルーの母)が現れた。例によって詳述されるが、彼女に対するプルーストの理解はこのようなものである。以下引用文。…

失われた時を求めて (48)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)ドレフュス事件についてノルポワ氏がこう語る。以下引用文。(吉川一義訳) 《「かりに有罪の判決が出たとしても」と氏は言う、「おそらく破棄されるでしょう。と申しますのも、証人の供述がこれほど多い訴訟では…

失われた時を求めて (47)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)この場にはノルポワ侯爵も居ることからプルーストは父親のアカデミー立候補の件を持ち出すのだが、否定的な事を言われている。要するに立候補はおよしなさいということだ。容姿端麗で大資産家のゲルマント公爵が…

失われた時を求めて (46)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)しばらくするとゲルマント公爵夫人が外出がてらという出で立ちで現れた。さらにルグランダン氏がヴィルパリジ侯爵夫人に面会を求め上がり込んでくる。この時のルグランダン氏の長広舌は聞くに耐えないもので、プ…

失われた時を求めて (45)

第六巻に進む。ウルトラ長編小説『失われた時を求めて』も東洋文庫28冊分と思えば安心して読む事ができる。さらに梗概を書きながら読むとこんがらがる事も少なくなる。 冒頭から12ページ位ずっとパリ社交界時評のような事が書かれているが、何のことはない、…

失われた時を求めて (44)

ゲルマント公爵夫人(オリヤーヌ)はサン=ルーの頼みをすげ無く断ったのか、サン=ルーはプルーストに若い従姉妹のポワクチエの方を勧めてくる。ポワクチエはドレフュスに同情的で悪魔島に送られたドレフュスの事を憐れんでいるという。悪魔島とはギアナに…

失われた時を求めて (43)

サン=ルーの上官であるボロディノ大公について詳しい叙述が始まる。彼の祖父はナポレオン一世から公爵位を与えられた大公であるという。姻戚関係もある。一方サン=ルーの方は父親がナポレオン一世から伯爵位を与えられたいわゆる「改造伯爵」であるという…

失われた時を求めて (42)

プルーストの目標はゲルマント公爵夫人と親しくなり、さらにいうと彼女の寵愛を受けることである。散歩作戦が大失敗に終わった今、プルーストが思いついたのは、ドンシエールに駐屯中のサン=ルーに口を利いてもらうことだった。プルーストの才能を高く買っ…

失われた時を求めて (41)

プルーストはオペラ座でのゲルマント公爵夫人の輝きを基準として夫人を愛そうとする。パリの路上で見かけた美しい娘たちよりもである。当面は。ところがプルーストが毎日散歩の途中で見かける夫人はそれとは似ても似つかぬものなのであった。描写を紹介する…

失われた時を求めて (40)

いよいよプルーストはパリ・オペラ座に乗り込んで「フェードル」を観劇する。プルーストの今の関心事はもはやラ・ベルマではなく、貴人の予約制であるベニョワール席なのである。そこでゲルマント大公妃が紳士に「ボンボン・グラッセはいかが?」などと勧め…

失われた時を求めて (39)

フランソワーズが調子に乗って活躍する。アパルトマンの七階を根城としその広い情報網でプルーストに情報をもたらす一方、従僕とのやり取りが喜劇じみている。まるでシェークスピアの戯曲のような書き方を試行しているかのようである。プルーストは冷静にフ…

失われた時を求めて (38)

第五巻に入る。プルースト一家は祖母の健康のため、空気の良いゲルマントの館の敷地内のアパルトマンに引越すことになる。新しい生活が始まり気分が一新と思いきやプルーストはまたもや難解な思索を繰り広げ始める。ゲルマントという言葉の独特な響き、シラ…

失われた時を求めて (37)

無事アルベルチーヌとカップルになれたプルーストは、アンドレ、ジゼルとも親しくなり性格のいいアンドレ、ルックスのいいジゼルにも触手を伸ばそうとする。が、はっきりした事は書いてない。プルーストはアルベルチーヌとともにエルスチールのアトリエを訪…

失われた時を求めて (36)

エルスチールが午後の集いを開いてくれる事になる。もう確実にアルベルチーヌ・シモネを紹介してもらえるのだ。プルーストがコーヒー風味のエクレアを食べ終わり、ノルマンディーから来た老紳士と話しているうちにそれは完了した。待ちに待った出来事なのに…

失われた時を求めて (35)

バルベックでは客がだんだんいなくなり、淋しい季節となった。そうした日の夕方、リヴベルのレストランに期待を込めてサン=ルーとともに乗り込んだプルーストは、彼に目当ての娘紹介してもらうつもりだったわけである。ところがプルーストはどんどん酒を飲…

失われた時を求めて (34)

ブロックの父親とニッシム・ベルナール伯父の話題に移る。プルーストはブロックの父親のことをスノッブだと言いたいようだが、意外と手強いところがありその容貌はオマール公爵の替え玉のようだと言う。一方伯父は虚言癖のあるスノッブで、プルーストは明ら…

失われた時を求めて (33)

サン=ルーの叔父のシャルリュス男爵が登場する。これでヴィルパリジ公爵夫人と合わせて三人のゲルマント家の人物が揃った。勿論プルーストもその場で紹介されたが、冷ややかな目線で応対されたのである。こういう場合プルーストの人物考察は、どんどんどん…

失われた時を求めて (32)

青年貴族ロベール・ド・サン=ルーが颯爽と現れる。彼はヴィルパリジ夫人の甥である。初対面でのプルーストに対する彼の態度は冷淡そのものだったが、二度目からは愛想のいい思いやりのある青年に変身する。彼は軍人だが文学などの精神世界に興味をもち、ニ…

失われた時を求めて (31)

いつの間にかプルーストはヴィルパリジ公爵夫人とも懇意になり幌付き四輪馬車で一緒にお出かけするようになる。そのヴィルパリジ公爵夫人とはプルーストによるとこの様な人である。以下引用文。(吉川一義訳) 《夫人はその言い訳をするみたいに、自分は父親…

失われた時を求めて (30)

長期逗留となるこのホテルは実在するホテルで、ルグランホテルカブールである。部屋はいわゆるオーシャンビューである事から気に入ったようだ。他人の目に神経質なのは相変わらずでこの様に記している。以下引用文。(吉川一義訳) 《どの階でも、連絡用の小…

失われた時を求めて (29)

第4巻はいかにも分厚い冊子である。いよいよ待ちに待ったバルベックへの汽車の旅が始まるのだが、乗り込むまでの口上が長い。乗ってからは移り変わる景色を楽しんだり、牛乳売りの娘を見て美と幸福な生活についての勝手な妄想を繰り広げる。だがその論調は…

失われた時を求めて (28)

この巻ではプルーストの人生にとって大変重要なイベントの記述がある。あのブロックがプルーストを娼家に初めて連れて行ったのである。だが大勢の美女がいると信じて訪れた先には、美女どころかぱっとしない願い下げしたくなるような女達が待っていたのだっ…

失われた時を求めて (27)

プルースト少年は気持ちが動転しているのかベルゴットとはあまり話さなかったようだ。その代わりスワンとベルゴットが直接対話する。これがどんな物になるのか興味深いが、会話を引用してみる。以下引用文。(吉川一義訳) 《「おっしゃておられるのは、あの…

失われた時を求めて (26)

事実かどうかは分からないが今やプルースト少年はフォーブール・サン=ジェルマン界隈に出入りするいっぱしの社交人となった。ある日などはブローニュの森の小径でナポレオン一世の姪御であるマチルド大公妃と出くわしてスワンに耳打ちされる。大公妃はスワ…

失われた時を求めて (25)

こんな事になっている。以下引用文。(吉川一義訳) 《それまで閉ざされていた道が意外にも開かれて、お伽の国を思わせる所領を私は敬意と歓喜に身震いしながらすでに探検しはじめていたが、それはあくまでジルベルトの友人としてであった。私が迎え入れられ…

失われた時を求めて (24)

ノルポワ氏の来訪は様々な余波を残した。一つは父がプルーストを外交官にするのを諦めた事である。これについては母親が不満を抱く。以下引用文。(吉川一義訳) 《「放っておきなさい、と言っているんだ」と父は大声をあげた、「なにより大切なのは、やって…

失われた時を求めて (23)

第3巻に入る。元外交官のノルポワ侯爵がわが家の晩餐に招待され交流を深めて行く。ノルポワ氏はプルーストに当代一の女優ラ・ベルマの劇を観る事が人生にプラスになるとアドバイスする。かくしてプルーストは祖母とともに「フェードル」を観に行くのであっ…

失われた時を求めて (22)

第二巻は打って変わって、ホームドラマのような内容なのでどんどん読めてしまう。パリのこじんまりとしたサロンでの人間同士のやりとりが続く。勿論主人公はスワンである。後にスワンの妻となるオデットとの交際が描かれる。以下引用文。(吉川一義訳) 《オ…