東洋文庫 アンコール踏査行 (1880)

著者のルイ・ドラボルトはまず当時のカンボジアとフランスの関係について簡潔に述べている。以下引用文。 《カンボジアは、同じくこの大河にうるおされ、南はフランス領コーチシナと境を接する国で、これと合わせてアジアの端におけるフランス領の全体を形成…

東洋文庫 東都歳時記 1 (1838)

本書は斎藤月岑が著した江戸の歳時記である。東洋文庫には同じ著者で 『増訂 武江年表 (1848)』もある。本文を少し紹介する。 《元日 ◯御一門方譜代御大名衆御禮(装束にて卯半刻出仕)諸御役人方御禮登城。 ◯諸家年禮 商家にては二日より出る。元日は戸を…

東洋文庫 入唐求法巡礼行記 1(847)

本書は円仁(794〜864)が入唐した際の十年間の記録である。一部を紹介する。 《二 堀港より揚州に向かう 七月九日、巳時、海陵鎮大使劉勉来たりて遣唐使等を慰問す。酒餅を贈り、兼ねて音声を設く。相従える官健の親事は八人なり。其の劉勉は紫朝服を着し、…

東洋文庫 知恵の七柱 (1926)

序文を読んでいて気づいたが「アラビアのロレンス」はロレンスの親友が書いたもので、「知恵の七柱」はロレンスが書いたものなのだった。ロレンスはこの本のことを《自己中心的な写し絵》と表現している。 第一章から一部紹介する。 《私はこのようなアラブ…

東洋文庫 百済観音 (1926)

著者の濱田耕作は型破りな感じの考古学者で美術史の分野にも著作がある。本書は著者の専門分野ではあるが気楽な雑文を集めたものである。 著者は百済観音像を法隆寺金堂で見て、後に奈良博物館で見ている。 《〜そのヒョロ長い反り曲がった像が高く玉虫厨子…

東洋文庫 日本中世史 原勝郎著(1906)

明治時代の史学界において名著とされた本書は流麗な文語体で書かれている。通読するのはやはり大変なので一部分だけ抜粋して味わってみる事にする。 《保延元年海賊競ひ発こり、上下の船運将に絶えむとせしや、四月八日関白忠通の邸に於て征討に関して議する…

東洋文庫 マッテオ・リッチ伝 1(1969)

本書は東大教養学部出身の俊英平川祐弘氏による書下ろしである。豊富な資料の引用によって構成されているが、著者の叙述の部分が面白いので一部紹介する。 《20 マンダリン (略) シナ官吏(マンダリン)の特徴は科挙の制で選ばれた点に、世襲的封建制と異…

東洋文庫 夢酔独言 他 (1843)

著者の勝小吉(1802〜1850)は勝海舟の父にして宮本武蔵より凄い武士と言われている。さていったいどういう事なのか。本書に併録されている『平子竜先生遺事』を読んでみよう。 《二、或時又々平先生を尋ねしに、早速逢はれ、種々咄の間に、足下は学問は好み…

東洋文庫 増補山東民譚集 (1914)

このような本を書いた柳田邦男は「思う存分書きたい病」のような状態だったことが再販序の記述から伺える。 《斯んな文章は当世には無論通じないのみならず、明治以前にも決して御手本があったわけで無い。大げさな名を附けるならば苦悶時代(略)に、何とか…

東洋文庫 西学東漸記 (1909)

本書は容閎(1828ー1912)による自伝である。端的に言うとこのような人物である。 《しかし、なぜ両親が外国人の学校なぞへ私を入れる気になったのか、いまもって私には不可解だ。(略)男の子の一人に英語を習わせておけば、高級通訳になれる。あるいはもっ…

東洋文庫 明治東京逸聞史 (1969)

著者の森銑三は明治・大正・昭和を生きた愛知県出身の文筆家で膨大な著作がある。この『明治東京逸聞史』も資料に基づいて書かれており時代を正確に写したものになっている。 冒頭の文章を紹介する。 《 慶応四年・明治元年 慶応四年は、鳥羽伏見の砲声に明…

東洋文庫 日本疾病史 (1912)

著者の富士川游はこの名著を著したばかりでなく随分色々な先駆的活動を行なっている。このことは巻末の年譜に詳しい。例によって本文の一部を紹介する。 《疫病 疾病の種類は、雑多にして、屈指列挙するに暇あらず。その中の一種にして、一定の時期に、同様…

東洋文庫 朝鮮幽囚記 (1666)

1653年6月18日オランダ領インド総督ヨアン・マーツアイケルの命を受けヤハト船スペルウォール号はバタビアを出港しタイオワンの政庁へと向かう。さらに日本へ向かう命を受け7月30日タイオワンを出港した。 この後スペルウォール号は済州島の南で難破し生き残…

東洋文庫 日本事物史 1 (1939)

著者のチェンバレンは序文でこう語っている。 《こんなわけで、一八七三年に日本に着いた筆者は、もう四〇〇歳にもなったような気持ちがして、老人のよく知られた特権—おしゃべりと威張った態度—を何の苦もなくとるようになるのである。著者は日本のことにつ…

東洋文庫 モンゴル帝国史 1(1824)

本書はドーソンによるオランダ語で書かれた原著の全訳である。訳者は佐口透氏である。この本は事実の記述は勿論のこと、関係の見透しにも秀れている。一部を紹介する。 《第六章 セルジューク政権の廃墟の上に建てられたホラズム帝国は、いくたの国家を合併…

東洋文庫 ラッフルズ伝 (1943)

著者である新夫清三郎による序文の一部から紹介する。 《日清戦争で日本が台湾を取得した当初、日本はアルジェリアにおけるフランスの植民政策を台湾に適用しようとして失敗し、後藤新平が民政長官としてイギリスの植民地政策を導入して成功した。(略)しか…

東洋文庫 日本児童遊戯集 (1901)

本書は明治三十四年、博文館刊行の「日本全国児童遊戯法」全三巻の覆刻である。本文より興味を引いたものをいくつか紹介する。 《東京》 まま事 こは女児の遊戯にして、我が手遊びの玩具などを配列し、勝手道具を並べて炊事の真似やら、菓子などを切り細きて…

東洋文庫 増訂 武江年表 (1848)

本書は一言で言うなら斎藤月岑が著した江戸・東京の地誌ということになる。本文を少し紹介する。 《天正十八年〔1590〕庚寅 今年八月一日、台駕はじめて江戸の御城へ入らせ給へり。そのころは御城の辺、葦沼汐入等の地にして田畑も多からず、農家寺院さへ所…

東洋文庫 義経記 (南北朝時代〜室町時代)

本書は義経記の口語訳及び注釈からなる読み物である。本文より弁慶の修行時代の話を紹介する。 《比叡山を出て、その麓の大原の別所というところにある、延暦寺の法師によって住み荒らされた庵室で、べつに誰から引き止められたというわけでもないのに、しば…

東洋文庫 新訂 西洋記聞 (1715)

新井白石は宝永五年(1706)の八月末、鹿児島県の屋久島に潜入上陸したローマ法王庁の使節、ジョヴァンニ・バッティスタ・シドチをわざわざ江戸に連行させ、しかも六代将軍家宣の特命によって翌宝永六年の十一・十二月に、シドチ取り調べの主役をつとめるこ…

東洋文庫 日本雑事詩 (1879)

定本の序にこのような文がある。 《わたしは丁丑(1877)の冬、命をうけて日本にわたり、二年になっていた。そのとき、すこしばかり、その国の文化人と交際をし、その国の書をよみ、その国の風習をならった。そこで「日本国志」をつくろうとおもいたち、ふる…

東洋文庫 中国古代寓話集 (1968)

本書は中国思想史の研究家後藤基巳氏による編纂もので日本語訳はご本人のものかと思われる。荘子、列子、戦国策、韓非子、呂氏春秋などからの抜粋である。 韓非子篇から本文を紹介する。 《書物を焼く 王寿が書物を背負って旅に出て、周の都への道すがら、徐…

東洋文庫 東京年中行事 1(1911)

若月紫蘭によって書かれた本書は、俳句を多く引用した東京歳時記であるという。冒頭の部分を紹介する。 《家康はじめて江戸に入ってからというもの、江戸の市街はみるみる繁昌におもむいたということは、当時の諺に『江戸の町に多いものは伊勢屋、稲荷に犬の…

東洋文庫 シーボルト先生1 その生涯及び功績 (1926)

本書はかの高名な精神科医呉秀三によるものである。序文および冒頭部は飛ばして、1823年10月16日付けのシーボルトから叔父に宛てた書簡を紹介する。 『私儀無事に日本に到着仕候て、万有学・医学の広き領域に於いて怠ることなく学問に従事致し、私生涯の最も…

東洋文庫 昨日は今日の物語 (1636)

江戸時代初期の仮名草子と見られている本書は正しくは『きのふはけふの物語』といい、いつものように現代語訳になっている。『戯言養気集』『醒睡笑』などと同類の本である。読んでみると『醒睡笑』より切れ味がやや優れている印象を受けた。少しだけ本文を…

東洋文庫 長安の春 (1920)

著者の石田幹之助博士は大正五年に東京帝国大学を卒業した東洋史学専攻の俊英でモリソン文庫(後の東洋文庫)創設の中心人物である。本書は小論考集ではあるが大変内容の濃いものとなっている。 『長安の春』は唐の都長安が華やかなりし頃、そこに集う人々と…

東洋文庫 今昔物語集2 (12世紀?)

読んで行くと立山の地獄のこととか、道成寺伝説がでてきて興味深いが、要約では面白みがないので一話だけそのまま紹介する。 《天王寺、八講のために法隆寺において太子の疏を写す語第十一 今は昔、天王寺の別当の定基が僧都になって、御堂関白(藤原道長)…

東洋文庫 昔夢会筆記 ー徳川慶喜公回相談ー(1915)

本書は元幕臣だった渋沢栄一が企劃編纂した徳川慶喜公の詳細で完璧な伝記資料のようである。目次を見るだけでこんなことが当事者の証言で記述されているのかと驚かされる。 さて内容を見て行こう。 《烈公の御教訓の事 烈公尊王の志厚く、毎年正月元旦には、…

東洋文庫 ヴェトナム亡国史(1905)

歴史の一場面を紹介する。 《客はまたこうも言った。 「過ぎたことを申しても仕方がありません。ーーただ、もしフランス人が人民の知識をひろめ民力を養うことに努め、わがヴェトナムのために、積年にわたって腐敗した政治や教育を一掃し、国民が自ら気力を…

東洋文庫 アラビアンナイト 1 (15世紀末)

訳者によるまえがきより一部を紹介する。 《この一書の中にはインドやペルシア、アラブ世界などのもろもろの民族の夢と現実、悲しみや喜び、世界観や人生観、信仰や風俗などがなにくれとなく語り出されている。人間性の醜さも美しさも、まことに心おきなく写…